バレエのヴァリエーション難易度一覧と選び方

クラシックバレエで踊られるソロの踊りのことをヴァリエーションといいます。バレエをやっている人なら、皆お気に入りのヴァリエーションがあるのではないでしょうか。

今回の記事では、人気のものからマイナーなものまで、バレエのヴァリエーションの種類を難易度別にまとめて一覧にしたものや、選び方などをお届けします。

発表会やコンクールでのヴァリエーション選びに役立てていただければ嬉しいです。

※この記事は2016年6月21日に作成したもので、随時加筆しています。

バレエのヴァリエーションとは


バレエの舞台で上演される作品の見せ場の一つに、ヴァリエーションと呼ばれるソロの踊りがあります。主役または準主役級の役によって踊られます。

男性・女性ヴァリエーションがあり、バレエダンサーの腕の見せどころでもあります。

物語の舞台上演のほか、バレエの発表会の小作品集や、コンクールでも踊られます。

バレエ教室の中には、ヴァリエーションクラスを設けているところもあります。

バリエーションや省略してVaと言うこともあり、比較的簡単なものや難しいもの、可愛いものやカッコいいもの、大人っぽいものなど様々な種類があります。色々なヴァリエーションが踊れるようになると楽しいです。



見どころ

男性

男性ヴァリエーションの特徴は、なんと言ってもダイナミックなところです。振り付けは、ほぼジャンプと回転から構成されています。

長さは女性と同様に数分ではありますが、その数分間に高難易度で体力を要するテクニックが詰め込まれています。

バレエ男性ダンサーって、一見優雅で繊細そうに見えますが、肉体は腹筋も太腿も本当に皆ムキムキに鍛えられています。そうでもしないと、ソロの踊りもグラン・パ・ド・ドゥも踊りこなせないのです。

バレエ男子を、なよなよしていそうなんて勝手なイメージでなめてかかると、痛い目に合うかもしれませんよ(笑)

男性バリエーションでは女性バリエーションとは全く違ったスケールの大きな踊りを楽しむことができます。

以下のような男性ならではの派手なパ(技・テクニック)もあります。

・アラセゴンターン(グランピルエットともいう。片足を約90度にキープしたまま、片足軸で回る連続ピルエット)
・トゥール・ザンレール(第5ポジションからの空中で回転しながらジャンプするパ。2回転または3回転)
・グラン・ジュッテ・アン・トゥールナン(ジャンプを繰り返しながらステージを一周するパ)
など

コンクールでは、拍手が禁止のところがほとんどですが、発表会や公演では、男性のヴァリエーション中には各見どころで拍手や歓声が沸き起こります。

女性

女性ヴァリエーションの見どころは、気品のある所作や優雅さですね。役によってはマイムが入るものもあって、可愛いです。

テクニックで言えば、舞台を回りながらのピケターンなどが見せ場と言えるでしょう。トウシューズでの綺麗な立ち方や、ポールドブラの使い方なども見どころです。

ヴァリエーション動画の探し方

YouTubeでヴァリエーション動画を探すには、「バレエコンクール」や「YAGP(ユースアメリカグランプリ)」で検索するか、英語のヴァリエーション名で検索する方法があります。プロの踊りが見たい場合は、英語で検索することをおすすめします。

バレエ演目と役名の英語については、下の記事にまとめています。

ヴァリエーションの選び方

コンクールでのヴァリエーションの選び方についてです。

課題曲がある

ヴァリエーションは、ほとんどの作品が数分なので、コンクールの審査として丁度良い長さですし、ジャンプやピルエットなど色々なテクニックが詰め込まれているので審査にもってこいなんですね。

多くのバレエコンクールでは、課題曲一覧があって、その中から踊りたいヴァリエーションを選ぶ形式になっています。

また、参加者が多い予選は1分以内と決められているコンクールもあります。その場合、元々1分以内の短いヴァリエーションを選ぶか、数分の曲を短縮して踊ります。

基本的に小学生中学年まではバレシューズ、小学校高学年以上の部門ではトウシューズを履いて踊ることが求められます。

あの有名なローザンヌ国際バレエコンクールも、毎年課題曲が発表されます。

また、コンクールによっては、同じ曲でも早めと遅めの2種類用意されている場合もあり、遅めの方が難易度が高いと言われています。

課題曲が多くても、実際コンクールを見てみると結構人気のバリエーションの種類は決まっていて、偏りがあることに気付くのではないでしょうか。4人連続同じものが続いたりすることも珍しくありません。

なぜそうなるかというと、コンクールで入賞しやすい作品や、小学生が踊りやすい作品など、定番があるからですね。

目的によって変える

また、コンクールに出る目的によっても、どの作品を選ぶのか違ってきます。

もしスカラシップ獲得が目的であれば、自己アピールが大切になってきますので、自分の長所を生かせる踊りやすいものを選ぶことをおすすめします。

例えば、ターンが得意なら、ピルエットやピケターンが多く入っている種類を選ぶ、ジャンプが得意なら、ジャンプが多い種類を選ぶなど。

スカラシップ目的ではなく、毎年恒例のコンクールや発表会などの場合は、得意なヴァリエーションばかりを毎回踊るよりも、色々な作品にチャレンジしてみることが成長するために大切です。

それぞれ人によって踊りやすいもの、踊りにくいものがあると思いますが、敢えて苦手なものを選ぶことで弱点克服につながることもあります。

バレエのヴァリエーション一覧

では、男性・女性ヴァリエーションの一覧を見てきましょう。女性については、難易度別にまとめています。

男性版

まずは、バレエの男性バリエーションをまとめようと思います。日本のバレエ人口は、女性の比率の方が圧倒的に高いですが、世界で活躍している日本の男性バレエダンサーも沢山います。

スイスで開催されるローザンヌ国際バレエコンクールでも、毎年日本から男の子が参加していますね。

チヤイコフスキー・パ・ド・ドゥより男性Va
ドン・キホーテよりバジルのVa

熊川哲也さんがローザンヌコンクールで優勝したときに踊ったVaです。ジャンプ力も回転力も求められます。

コンクールでも定番で、気品があるかっこいい踊りです。

くるみ割り人形より王子のVa
眠れる森の美女よりブルーバードのVa
コッペリアよりフランツのVa
海賊より男性のVa

↑コンクールで人気です。ダイナミックさをアピールするにはピッタリです。

ラ・シルフィードよりジェームスのVa

スコットランド風のスカートの衣装を着て踊られることが多いです。

細やかな足さばきが特徴的です。

エスメラルダよりアクティオンのVa
ライモンダよりジャン・ド・ブリエンヌのVa
ラ・バヤデールよりソロルのVa

二山治雄さんが2014年度のローザンヌバレエコンクールで優勝したときに躍ったVaです。

ラ・フィユ・マルガルテよりコーラのVa
ジゼルよりアルブレヒトのVa

女性版(難易度別)

以下、難易度別に役名を作品名と共にご紹介します。求められるテクニックや特徴についても触れています。



易しめ

初めてのコンクールの定番のバリエーションです。小学生がエントリーする部門でよく見られます。曲の長さも短めで、可愛らしいものが多いです。

フロリナ王女/青い鳥、ブルーバード(『眠りの森の美女』より)

衣装は青色が基調。求められるテクニックは、フェッテ・アラベスク、シェネなど。
ペザント(『ジゼル』より)
キューピッド(『ドン・キホーテ』より)

スピーディなバリエーションです。ウィッグをつけて踊る場合が多いです。衣装がシンプルなので、その分粗が目立ちやすいかもしれません。
パリの炎(『パリの炎』より)
ダイアナ(『エスメラルダ』より)

中くらい

すごく難しい技術は要求されませんが、これらをミスなく踊ることができれば有名コンクールでも優勝が見えてくる中級者向けのバリエーションです。

リーズの結婚(『リーズの結婚/ラ・フィユ・マル・ガルデ』より)

細やかで正確な足さばきが必要となります。
白鳥の湖よりパドトロワ(『白鳥の湖』より)
シルヴィア(『シルヴィア』より)

可愛いバリエーションです。
パキータ(『パキータ』より)
アレルキナーダ(『アレルキナーダ』より)

近年ジュニア層を中心に人気のヴァリエーション。衣装や振り付けが可愛いです。
チャイコフスキー・パドドゥ(『チャイコフスキー・パドドゥ』より)
アスピシア(『ファラオの娘』より)
タリスマン(『タリスマン』より)
ゼンツァーノの花祭り(『ゼンツァーノの花祭り』より)
ワルプルギスの夜(『ワルプルギスの夜』より)

近年コンクールで人気上昇中のバリエーションです。
リラの精(『眠りの森の美女』より)
シンデレラ(『シンデレラ』より)
オーロラ姫1幕/ローズアダジオ(『眠りの森の美女』より)

ピルエットが多いので、回転が得意な人向けです。
オーロラ姫3幕(『眠りの森の美女』より)

年齢問わずコンクールの定番です。
ジゼル(『ジゼル』より)

白と水色の衣装が主流です。繊細な感情表現が求められます。高校生~大人向けのバリエーションです。
金平糖の精(『くるみ割り人形』より)

難しめ

中学生や高校生がエントリーする部門でよく見られます。ジャンプや回転、柔軟性、表現力など高いテクニックが必要となり、華やかなバリエーションです。技術に自信のあるコンクールの上位入賞者がよく踊る作品です。

ドルシネア姫(『ドン・キホーテ』より)
ライモンダ(『ライモンダ』より)

ゆったりとした動きが多いので、体のコントロールが求められます。高校生~大人向けのバリエーションです。
キトリ1幕(『ドン・キホーテ』より)

カスタネットを手に、スピード感溢れるバリエーションです。機敏な足さばきが求められます。
キトリ3幕(『ドン・キホーテ』より)

真っ赤な衣装で、扇子を使って踊るバリエーション。今も昔も、コンクールの定番の一つです。ジャンプが得意な人向け。
サタネラ(『サタネラ』より)

回転が得意な人向けです。
オディール/黒鳥(『白鳥の湖』より)

表現力と回転力が特に必要となります。黒い衣装が定番。大人っぽくてかっこいいバリエーションです。
スワニルダ1幕/3幕(『コッペリア』より)

どちらも、振り付けにイタリアンフェッテが含まれることが多いです。1幕はマイムが可愛いバリエーションです。
森の女王(『ドン・キホーテ』より)
バヤデール/ガムザッティ(『バヤデール』より)
海賊/メドーラ(『海賊』より)

ジャンプが多いです。中学生・高校生の部でよく見るバリエーションです。
エスメラルダ(『エスメラルダ』より)

タンバリンを使って踊るバリエーション。華やかです。柔軟性やキープ力、回転力が求められます。
グラン・パ・クラシック(『グラン・パ・クラシック』より)

全身のコントロール能力がかなり求められるため、難しいです。
カルメン(『カルメン』より)

コンクールで踊る人は珍しいです。妖艶さと体の柔軟性が求められるバリエーションです。

難易度は、イタリアンフェッテを入れるか入れないか、何回転ピルエットをするかなど、振付けの種類にもよるので参考までにどうぞ。大人のバレエ初心者の発表会などでは、振付を大きく変えて披露することもあります。

また、どの踊りも美しく完璧に踊ろうと思えば決して簡単ではありません。

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